私の理想の死にかた

今のところいつか絶対に死ぬ私たち

私の理想の死にかたの話


じいちゃんが死んでから半年以上過ぎた

その日も朝食をモリモリ食べ、
おやつのお餅を食べ
芋掘りに行く準備をして、
トイレで眠るように息を引き取ったじいちゃん。


突然すぎたけど
ばあちゃんに先立たれて3年
この日が来てしまうのをどこかで覚悟していたこの頃だった


私は、朝から用事があって家を出た
高速に乗ってすぐ、妹からかかってきた電話をとった瞬間に後ろで救急車の音がしてわかった

話しを聞きながら心の中で自分を責める

隣の実家の玄関を開けて、行ってきますって言おうかなーと思いつつ出てしまった。
家を出る前に一瞬思ったのになんでやらなかった!


高速の路肩に車を停めて、
落ち着こうとしたけど手が震えて
深呼吸し、考えた

すぐ高速を下りたい気持ちを押さえ、
今一番してはいけないことは私が事故するこなんだと、しっかりと自分に言い聞かせ、
一番近くのインターまで急いだ

病院に着いて妹から説明を聞き
心臓マッサージを受けてるところへ
呼ばれた


おそらく医者になりたてのぺーぺーの新人先生がしろど戻ろで何度も同じ説明をする

ベテラン看護師さんにイラっとされながら
また同じ説明をする

一時間近くも心臓マッサージして
じいちゃんも疲れただろうな
隣にいたのに、もうここにはいない気がした

「わかりました。ありがとうございました」

母の了解も得ず、私が言った
治療室を出て、骨折して家にいる母に電話で伝えた

「わかってる。頑張ってくれた。もういいよ」



ばあちゃん同様、いろいろな思い出を語り、明るく見送ったお葬式だった


四十九日が終わるまでは、じいちゃんは確実に家にいた

たまに見える妹が、お通夜のときに
喪主の席にじいちゃんが座ろうとしてるから注意しといたって言ってたし。


敏感な姪っこが
掘ってきて置きっぱなしの芋のところにじいちゃんがずっと立ってるって言ってたし。
芋掘り直前だったもんね。気になるよね。


私はそんなの普段は全然分からないけど、さすがにじいちゃんの気配は至るところで感じていて。

家のアコーディオンカーテンの真ん中だけ揺れてるから、
もう、じいちゃん怖いってー笑
っと一人で言ってみたら揺れがおさまって、
よけい怖いわ!ってツッコんでみたり。


ゴミ集めはじいちゃんにしてもらっていたからゴミの日に、落ちるはずのないところに置いてあったペットボトルが落ちてた時もじいちゃんだなと思った

そして一人でじいちゃんにツッコむ
じいちゃん、これはゴミじゃないってー

なんとなく、裏口からじいちゃんが入ってくる気がして見た瞬間に犬が一緒に振り向いたり。


まぁ、親戚中の話題になるほどあちこちで出てきてたからちょっと心配になって

四十九日の時に、ばあちゃんに迎えに来てーって真剣にお願いした

そしたらほんとに来てくれたらしく、その日から全く気配がなくなった



憧れるほど、理想の死に方だった

年の順番に、元気なままで、手がかからず
苦しまずにパッと逝く

とても穏やかで、ばあちゃんと同じ顔をしていた
弔問に来てくれた人が口々に「私もそうありたい」と言ってくれた

後から親戚の看護師さんと
ぺーぺー先生の話しになったら親戚の看護師さんはこう言った

「そんな時でも人の役に立つなんてやっぱりおいちゃんやわー。すごいわー」

看護師さん曰く、きっとそのぺーぺー先生は研修生とかでそんなこと初めての経験で、きっと先生の役に立っているって。


それを聞いて、そうなのか。と思った。

私の中では、こんな先生がじいちゃんを見てくれて、ちょっと悲しいと思っていたからそうだと思ったら安心した


お葬式が終わっても、なかなか動く気になれない自分を不思議に思い、手帳の整理をしてみた時

そこで出てきたけっこういっぱいのフセンは

庭の草むしり
畑の手伝い
苗の買い物

とか、じいちゃんの手伝いをするようなものがいっぱいあった

終わってるのもいっぱいあったのに
なぜか捨てずに取ってあって
なんだ私こんな前からちゃんとわかってたんだと気がついた

手帳はこんなことも教えてくれる


そして半年かけてゆっくりと庭や畑の私が出来ることをした

野菜は妹が作ってくれ、倉庫の掃除と木の剪定はおかきさんがしてくれて、だいぶ良い感じになってきた

ジャングルの手入れは大変だけど、あとはゆっくり好きにするから上でばあちゃんと見ていてよ

庭の一角を開墾して畑にしてくれてありがとー

って、じいちゃんに言う


今んとこ、これが私の理想の死にかた

私もいつその時がくるかわからない

だからその時までの時間があることを心に留めて生きている

子ども達には
「いってらっしゃい。いってきます」
を口うるさく言いながら。




今日もありがとうございます








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